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2011/04/19

電池の価格破壊、LG Chem社が仕掛ける 車載用リチウムイオン電池(1)

2011/4/6 7:00
 電気自動車/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E4E7E2E7E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NX(EV)やプラグインハイブリッド(PHEVまたはPHV)車の本格的な普及を前に,車載用リチウム(Li)イオン2次電池/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E5E3E3EBE2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NXの価格競争が激化している。台風の目は,LG Chem社だ。自動車メーカーに対し,携帯機器向けと容量当たりで同等の価格を提示し始めた。他の車載電池メーカーも追従せざるを得ない状況になりそうだ。本連載では,急激に変化する車載用電池の最新事情を追う。
「1社購買はしない」(トヨタ自動車代表取締役副社長の内山田竹志氏)――。

 自動車メーカーが今,車載用Liイオン2次電池の複数社購買(調達)に向けて動きだしている(図1)。トヨタ自動車は,三洋電機からLiイオン2次電池を調達するだけでなく,子会社/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3EBE0EBE5E2E3E5E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NXであるプライムアースEVエナジー(PEVE)でLiイオン2次電池を量産することを表明した[注1]。
一方,Renault-日産グループのフランスRenault社は,日産自動車とNECの合弁会社であるオートモーティブエナジーサプライ(AESC)からLiイオン2次電池を全量調達するとされてきたが,韓国LG Chem社からも供給を受ける。

 同様の動きは、ほかにもある。ジーエス・ユアサ コーポレーション(GSユアサ)や三菱商事と,電池の合弁会社であるリチウムエナジー ジャパンを設立している三菱自動車は,商用タイプの電気自動車(EV)に東芝のLiイオン2次電池を採用する方針を明らかにしている。

[注1] トヨタ自動車が2010年11月に開催した「トヨタ環境技術取材会」において,内山田氏が日経エレクトロニクス誌の取材に対して1社購買をしない方針を明らかにした。
このように,大手自動車メーカーが車載用Liイオン2次電池を2社以上から調達する方針を加速させている背景には,電動車両の普及前にもかかわらず,車載用Liイオン2次電池の価格が急速に低下していることがある。

 大きな要因は二つある。一つはEVやPHEVの市場導入が急速に進んできたこと。もう一つは,LG Chem社の価格破壊である。

 最初の要因については,以下のように説明できる。これまで電動車両の主流はハイブリッド車/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E5E3E1E0E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NX(HEV)と考えられてきた。HEVでは,車両1台当たりのLiイオン2次電池の搭載量が0.5kWh~1.5kWh程度と少なく,電池の量産効果が得られにくかった。そのため,自動車メーカーは複数車種の電池を共有化し,使用量を増やす必要があった。その上で,電池の量産効果を享受するには,なるべく1社の電池メーカーから調達するのが望ましかった[注2]。

 ところが,EVやPHEVとなると話は違ってくる。EVは20kWh程度,PHEVは5kWh~16kWh前後と,1台当たりの搭載量はHEVの10~40倍に跳ね上がる。量販車種としての販売を前提にすれば,1車種でも電池の量産効果を得られる水準である。

 これを実行に移したのが,日産自動車である。同社は,まずEVを年間5万台生産することを前提に電池の量産計画を立て,当初から価格の引き下げを狙った。2012年には年間20万台の生産を計画しており,実現すれば電池のコストは「現状の民生用Liイオン2次電池並みになる」(日産自動車)とする。

■LG Chem社が「信じられない電池価格を提示」

 これほどの大量生産をわずか2~3年で達成し,電池コストを大幅に削減できるのか。電池関係者が首をかしげる中,さらに周囲を驚かしているのがLG Chem社である。

 同社は最近,立て続けに大手自動車メーカーからの採用を決めた。これについて,電池関係者からは「信じられない電池価格を提示しているようだ」との指摘が出ている。LG Chem社は韓国と米国に大規模な車載用電池の量産工場を建設中だが,現在提示している価格は,この量産工場で生産した際のコストを前提とした戦略的なものといわれている。

 実際,2011年2月に米国で米Society of Automotive Engineers(SAE,自動車技術会)が主催した「2011 Hybrid Vehicle Technologies Symposium + Electric Vehicle Technologies Day」では,「LG Chem社が現状でのセルの価格を,1kWh当たり350~400米ドル(約2万9400~3万3600円)と明かした」(自動車ジャーナリストの桃田健史氏)とする。この価格は,民生市場での携帯機器向けのLiイオン2次電池のそれとほぼ同等である。

 LG Chem社の存在感が増す中,同じ韓国企業でLiイオン2次電池を手掛けるSamsung SDI社やSK Innovation社も,同程度の水準まで自社の提示価格を引き下げるとの見方が強い。

[注2] 実際,トヨタ自動車がHEVに採用していたニッケル(Ni)水素2次電池については,プライムアースEVエナジー(PEVE)からの1社購買だった。

「電池は化学品だから,半導体や液晶/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E4E6E6E2E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NXパネルとは違う(急激に価格は下がりにくい)」というこれまでの通説はもはや当てはまらなくなるだろう。さらに,こうした状況を受けて自動車メーカーが調達先である電池メーカーを増やし,企業間を競わせる方向に動くことは間違いなく,電池メーカーはより熾烈(しれつ)な価格競争にさらされそうだ。

■中国メーカーと提携する米国

 電池メーカーがこうした状況を乗り切るには,量の確保が必須となる。その方向性を中国市場に求めたのが,米国の電池メーカーだ。積極的に中国の自動車関連メーカーとの提携を進めている。具体的には,米A123 Systems社は中国SAIC Motor社(上海汽車)と,米Ener1社は中国最大手の自動車部品メーカーであるWanxiang Group社と,それぞれ合弁会社を設立する計画である[注3]。

 中国は世界一の自動車市場に駆け上がったのに加えて,中国政府のEV政策が大きく注目されている。そのため,政府の施策によって早期に導入が進むバスやタクシー,商用車といった業務用車両向けの電池需要をまずは取り込む構えだ。米国の電池メーカーはこのほか,米国内で需要が立ち上がりつつある電力網の安定化に向けた蓄電システム用の大型電池市場への布石も打っており,量の確保を虎視眈々(たんたん)と狙う(本連載第2回の「メード・イン・アメリカの電池、その量産工場に潜入」参照)。

■気になるパナソニックの動き

 量の確保に向けて積極策を取る米国メーカーとは対照的なのが,日本の電池メーカーである。日本メーカーについては,日産自動車が日米欧で Liイオン2次電池の生産拠点を急速に立ち上げようとしている以外は海外での動きが見えてこない。三洋電機を完全子会社化したパナソニックも,その期待とは裏腹に動きが鈍い。

 三洋電機は,車載用電池向けに大型セルの量産工場を兵庫県加西市に建設し,ドイツAudi社を皮切りに,2011年中にはトヨタ自動車への供給を始めるといわれている。この大型セルをパナソニック・グループとして世界で拡販していくことを期待したいところだが,実際には,パナソニックの電池事業部門はノート・パソコン向け円筒型セル「18650」を車載向けに拡販しようと積極的に動いている。

 例えばパナソニックは,2008年にノート・パソコン用のセルを6800本用いたEV「Roadster」を発売して世界を驚かせた米Tesla Motors社と提携し,2010年11月には資本参加までした。

 もっとも,Tesla Motors社にはそもそも三洋電機が18650セルを供給していたとされており,パナソニックがわざわざ提携や資本投下する必然性が見えてこない。むしろ,パナソニックにとっての喫緊の課題は,自動車メーカーによる米欧中での現地調達にどう対応するかである。自動車産業における各国の政府の現地調達に対する要求は民生機器とは比較にならないほど厳しいため,早急に対策を打たなければならないだろう。 (次回に続く)

[注3] Ener1社は,傘下で電池製造を手掛けていたEnerDel社を統合している。

(日経エレクトロニクス 狩集浩志)

[日経エレクトロニクス2011年3月7日号の記事を基に再構成]

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