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2008/11/16

日産自動車社長CEO カルロス・ゴーン 「世界初の電気自動車量販メーカー目指す」


http://diamond.jp/series/greenleadership/10001/
【第1回】 2008年11月13日
現在の電気自動車ブーム。その“火つけ役”は、明らかに日産自動車である。世界の自動車メーカーが本格的な量販には二の足を踏むなかで、なんと世界的に万を超える規模で量販すると宣言したからだ。勝算はあるのか。カルロス・ゴーンCEOに聞いた。(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣、柳澤里佳)


撮影:住友一俊
――日産自動車は、今年度からの中期経営計画で、電気自動車などのゼロエミッション車(排ガスゼロのクルマ)でリーダーになることを宣言しています。

 かつて電気自動車の普及は失敗に終わりましたが、現在は事情が明らかに異なります。社会の関心事は、うなぎ登りに上がるガソリン価格や、地球環境問題に集中しています。電気自動車は、石油に依存せず、二酸化炭素も排出しない。まさに、2つの問題に対応できるものです。

 日産には、長年にわたって取り組んできた電池や電気自動車の技術があります。これら内外の要因を見れば、戦略的に日産がやると決めた理由も、私の情熱もおわかりになるでしょう。

――日産は電気自動車を2010年度に日米で、12年度には世界的に量販を始めます。最終的にはどのくらいの台数を販売するのですか。

 まだなんともいえません。電池を開発したり、イスラエル政府などとも販売の契約を交わしたばかりです。電気自動車を投入するための条件は整いつつありますが、そのほかは決まっていないことばかりなのです。

 10年度の投入については、日本では神奈川県、米国ではカリフォルニア州が中心となります。規模としては数千台規模、いやいや、数字については申し上げるのはやめましょう(笑)。つまり、私が言いたいのは、大量生産するということなんです。

 自動車メーカーは、一定の最新技術を見せ、それで「棚上げ」ということがよくあります。でも、日産は違います。本気です。電気自動車を“パレードのため”ではなく、コアビジネスとして扱います。世界初の量販メーカーになることが目標です。最初は1車種から始め、いずれラインナップを揃えます。
発売するのは格好よく
わくわくする専用車
――具体的に、販売するのは、どんなクルマなんでしょう。

 今ちょうど、デザインなどの選定作業に入っているところです。ただし、軽自動車では出しません。1人乗りのオモチャのようなクルマでもありません。あらゆる安全基準をクリアし、世界の主要各国で販売可能なクルマです。

――やはり、4~5人乗りのコンパクトカーですか。

 これ以上は申し上げられません(笑)。すでに新型電気自動車のシステムは出来上がっており、そのシステムを現行車に載せて、いろいろテストしているところです。

――既存車の電気化ではなく、ズバリ、専用車ですか。

 そうです。完全な専用車です。ひと目見れば、あれが日産の電気自動車だとわかるほど、デザインは魅力に溢れ、走行性能もびっくりするほどのクルマです。

 今までの電気自動車のイメージは正直言って、どこか退屈で、わくわくしないものです。実際、同業他社には、なんだかイマイチでみっともなく、運転しにくいクルマもあります。日産は、そうではありません。とても格好よくて、非常にエキサイティング。なんらかの性能を犠牲にして、製品化するものではありません。

――日産とルノーの役割分担は、どのようになるのでしょう。

 日産は日本国内、ルノーも現地で組み立てを行ないます。それぞれのホームカントリーで、まったく別々のクルマ、デザインや外装が異なるクルマを生産する予定です。ただ、ベースとなる技術や電池は同じで、サプライヤーも共通です。いわば、共通エンジンと同じ発想ですね。

 現在でも、日産とルノーは共通のエンジンを使い、セダン、ハッチバック、四駆など、いろんな仕様で別々のクルマを作っています。それと同じです。販売については、日産は日本と北米、ルノーは欧州を担当します。将来は両社とも世界的に展開します。

――電気自動車は普及すると思いますか。

 まだわかりませんが、私たちは強気です。自信もあります。というのも、いろんな国や自治体から多くの相談が寄せられているからです。今後も、日産から相次いで電気自動車に関する発表が行なわれるでしょう。潮流は明らかに普及に向かって流れています。
もっとも、普及には、2つの条件があります。1つ目は技術的な面。まずは一充電走行距離、信頼性、安全性、妥当なコスト。これらは社内で取り組むべき条件です。

 2つ目は、政府の普及策や優遇策。たとえば、イスラエルでは政府が電気自動車に対し、税制面での優遇策を提供しています。充電設備などのインフラ整備も、国や自治体に率先して取り組んでいただきたいことです。

 コスト面は、消費者にとって理にかなったものでないといけません。最低でも、電池を除いたクルマのコストが通常のガソリン車と同程度でないと話になりません。さらに、ガソリン価格との比較。たとえば、電池のリース料と電気料金の合算値は、ガソリン価格よりも安くないと意味がないでしょう。

これまでのクルマの持つ
負のイメージを払拭する
――今後、世界展開のうえで、イスラエルやデンマークなどで一緒に事業を行なう予定のプロジェクト・ベター・プレイスとの協業はもっと広がりますか。

 お互いに利害を考えてやっていることですから、国や条件によって判断します。臨機応変に対応します。

――プラグインハイブリッドについてはどのように考えていますか。

 有望な技術の1つではあります。ただし、ブレークスルーではありません。私にとってブレークスルーは、あくまでゼロエミッション車です。高速道路でも、街中でも関係なく、どこで運転しても排ガスはゼロ。だからこそ、電気自動車は力強い提案になるんです。

 長年にわたってクルマは石油に依存し、二酸化炭素を排出するという負のイメージが固定化しています。現在、これが脅威であると考えられています。このイメージは払拭されなければなりません。

――日産は、その歴史の転換期の主役になりたいということですか。

 チャレンジはしてみたい。私が日本に来た1999年は、日産は破綻寸前であり、「技術の日産はどうしたんだ」と言われました。でも、忍耐強く再建し、投資も再開、人材を強化して8年間かけてようやく、ここまで技術力が回復したのです。ここにきて、日産はなにか目に見える成果、意味のあるクルマを出さなくてはなりません。

――まさに「眠れる獅子」が覚醒する、という感じですか。

 眠れる獅子ですか。さて、獅子かどうかはわかりません。結果を見て判断してください。もしかしたら、ネコかもしれませんよ(笑)。

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣、柳澤里佳)



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