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2008/11/28

大手電池メーカーの野望バフェット氏も認めた中国BYD


http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20081113/177196/
2008年11月17日 月曜日 FINANCIAL TIMES
中国  BYD  リチウムイオン電池  電気自動車  プラグインハイブリッド車   環境に配慮した自動車の必要性は誰もが認める。中国の比亜迪(BYD)の王伝福総裁(42歳)は、中国人の頭脳と勤勉さに、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の資金が加わった今、それを実現するのは自分だと信じている。

 ダウ平均が7%近く下がった9月29日。ウォール街最悪の日に数えられるこの日、バフェット氏が抱えるミッドアメリカン・エナジー・ホールディングス*1がBYDの株式10%を取得した。

世界最大の自動車会社目指す
 BYDは、充電式電池では世界大手であると同時に中国自動車産業の期待の星である。今回の投資は、電気と自動車を組み合わせて自動車産業の「緑の革命」 を先導していくのは、技術者から起業家に転じた王氏だというバフェット氏の信頼を勝ち得たことを意味する。この出資は香港市場を驚かせ、BYD株(25%を王氏が所有)は42%も急上昇した。

 香港に隣接する深圳 市にあるBYD本社でインタビューに応じた王氏は、西欧の成熟経済から産業の主導権が中国に移りつつあることをBYDが象徴していると明言した。

 来客用にダイエットコークが並んだ役員室の大きな机を前に腰掛けた王氏は半袖シャツの胸ポケットにボールペンを挿し、メガネを掛けている。カルロス・ゴーン氏のような自動車会社の洗練されたトップというより、中国版ビル・ゲイツ氏を思わせる。バフェット氏は彼こそが自動車技術に新たな革命をもたらす逸材と見込んだのである。

 王氏は穏やかな口調で、2025年までにBYDを世界最大の自動車メーカーにすると語る。「『新エネルギー車』で我々は世界トップになる自信がある。技術的には10年あれば十分だ」。

 自動車産業は今、リチウムイオン電池を動力源とした家庭で充電できるプラグインハイブリッド車や電気自動車への転換という、100年の歴史の中で経験したことのない速さの技術的変化に直面している。この大きな潮流の中心にいると自負しているのが王氏だ。

 BYDの事業をどのように拡大させてきたかを尋ねると、控えめな答えが返ってきた。「我々は典型的な中国企業だ。賢明かつ勤勉で、置かれた状況を最大限に生かしてきた」。

*1=同社は、バフェット氏が率いる米バークシャー・ハザウェイが株式の87.4%を持つガス・電力会社

だが彼の謙虚な言葉の裏には民族的自尊心が潜んでいる。つまり、王氏は中国企業は西側の企業より賢明で勤勉だと言いたいのだ。中国の強みは市場の大きさであり、人民の質だ。毎年中国の大学を卒業する学生数は500万人。「欧州のどこかの国の人口を上回る」規模で、しかもその賃金は西側や日本の競合各社に比べずっと低い。

 BYDで働く技術者は1万人。その半分が自動車に携わっている。王氏は10年以内に自動車関連の技術者を3万人に増やすつもりだ。「コストが高すぎて」 日米のライバルはこれほど多く雇えないと指摘する。BYDはマネジャーの大半を新卒で雇い、現場で鍛える。彼らは工場に隣接する寮で起居する。

 13年前の創業時、王氏は日本製自動電池製造ラインを輸入する資金にすら事欠いていた。それが今や携帯電話機用電池ではシェア30%の世界1位、ノートパソコンなど電気製品向けの充電式電池では世界2位を誇る。

 さらに驚くのは、2005年に初めてクルマを自主開発した同社が今年9月、販売台数では中国メーカーで1位となったことだ。これは新型小型車「F0」の発売に負うところが大きく、今後も好調が続くとは考えにくい。それでも自動車コンサルティング大手のJ・D・パワーは、BYDが今年、販売台数を50%以上伸ばすと予測している。

 政府系機関で研究者として経験を積んだ王氏がBYDを創業したのは1995年。中国は経済開放政策のただ中にあった。「当時の深圳 は活気に満ちていて、ゴールドラッシュが起きているようだった」と王氏は振り返る。

 政府の研究者が調達できる資金の少なさに不満を感じた王氏は、親類に借金をして独立し、ニッケル電池を作り始めた。彼は技術書を読んで自分で組み立てた半自動装置を使った。新興のBYDに対し、警戒心を高めた日本の既存メーカーは日本ではソニーが、米国では三洋電機が特許侵害で提訴。後者は示談によって解決している。

加速感や仕上がりには課題
 小型リチウムイオン電池市場で大きなシェアを獲得した今、王氏は社内のほぼ全エネルギーを代替燃料車に注いでいる。内燃機関より環境に優しい技術への注目が高まる中、王氏は自社の電池生産に関する蓄積は、電気自動車の分野で大きな強みになると考えている。BYDは今年後半にプラグインハイブリッド車を発売、米国及び欧州連合(EU)市場には2011年に投入する計画だ。電気自動車「E6」については中国で2009年に発売する予定だ。

プラグインでは、仏ルノーや日産自動車、独メルセデス・ベンツに加え、中国でシボレー「ボルト」を生産する計画の米ゼネラル・モーターズ(GM)などが競合となる。迎え撃つ準備は万端だと王氏は言う。「中国企業は優れた電池を生産するのだから、代替燃料車ではリーダーになれる」。実際、BYDより経験豊富な自動車メーカーが、プラグインの試作車を作る段階で、自動車向け電池としての充電速度や、ノートパソコン用よりはるかに長持ちする必要がある耐久性の面でてこずっている。

 これに対し、競合各社はBYDのクルマは仕上がりの点などで、既存メーカーの水準には遠く及ばないと反論する。「振動音や乗り心地、燃費効率、加速感で課題が多く、すべてを改善するには時間がかかるだろう」。BYDのクルマに乗った経験のある大手外資メーカーのある中国法人トップは、匿名を条件にこう指摘する。

 E6の試作車でBYDの駐車場の周りを試乗した本紙(フィナンシャル・タイムズ紙)の記者も、この意見には同感だ。音は静かで燃費も悪くないが、ハンドリングや仕上がりの点では多くの外国車に及ばない。

 特に最近は中国製粉ミルク事件などで、中国製品への不信感が高まっているだけに、BYDのクルマが欧米で広く受け入れられるまでには、かなりの課題に直面することになるだろう。

 また、中国製いかんにかかわらず、ノートパソコンで発生したリチウムイオン電池の爆発事故を考えると、電気自動車に対する自動車メーカーが抱える製造物責任の潜在的リスクは極めて大きい。

 王氏はこの問題を強く否定する。「我が社は今まで一度もリコール(回収・無償修理)したことがない唯一の電池メーカーだ」。リコールに巨額の費用を投じた三洋電機やソニーの名をあえて口にしなかったが、「製品の品質には非常に自信を持っている」と語る。

 何十年も消費者に認知され、マーケティングの経験も積んできた外国メーカーと肩を並べて戦えるようなブランドを構築するには、まだ長く時間がかかることは王氏も認める。だが一方で、プラグイン車の市場は、いわばまだ何も描かれていないキャンバスだとも言う。「我々が話をしているのは全く新しいクルマのことで、どのメーカーも同じ地点からスタートしている」。

John Reed and Patti Waldmeir
(FINANCIAL TIMES,(C) 2008 Nov. 2)

 日経ビジネス 2008年11月17日号175ページより




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