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2008/11/28

環境問題でキャパシタの出番は増えるはず


不況と環境
2008/11/17 10:20

吉田 勝=日経エレクトロニクス
 "環境問題でキャパシタの出番は増えるはず"---日経エレクトロニクス2008年11月17日号の解説で取り上げたLiイオン・キャパシタ(LIC)の取材で,あるLICメーカーの担当者は今後の需要増に大きな期待を寄せていました。ピーク電流の補助やブレーキの回生電力蓄電など省電力化,ひいてはCO2削減にLICが役立つと考えられているからです。例えば,前者ではエンジンのセルモータの始動や,工業用ロボットなどのモーターを急加速させるときなど,一時的に要求される大電流をキャパシタに蓄電した電力で補うわけです。そうすれば,主電源やその配線はピーク電流に合わせなくてもよいので小型・小容量化できます。このほか,記事にも書きましたが,風力発電設備からの給電を平準化するための補助蓄電デバイスとしてもLICが使われて始めています。

 LICは,Liイオン2次電池と電気2重層キャパシタのいいとこどりしたような構造で,電気2重層キャパシタと同様に急速充放電が可能ですが,エネルギー密度が電気2重層キャパシタよりずっと大きいという特徴があります。しかも,原理的に熱暴走がないのでLiイオン2次電池よりも安全とされています。安全で高性能ということで,上記のような用途のほかにも,エネルギー密度の高さを生かして事務機器やAGV(無人搬送車)の電池といった使い方も期待されています。取材が進むに連れ,有望なデバイスだという感触が強まりましたし,今後の普及を楽しみにもしています(詳しくは本誌をご覧下さい…と,雑誌宣伝)。

 しかし,LICに限りませんが,「環境」がいつまでも新しい技術開発や普及のドライビング・フォースとなり得るだろうかという漠然とした不安も感じました。

 環境性能の改善は,省電力化のようにランニングコストの削減にはつながることもありますが,原価の削減には必ずしも結びつきません。むしろ環境と原価はトレードオフの関係にある場合の方が普通でしょう。従ってエコだけとちょっと高いという製品が多い。それでも,これまでは,石油価格の高騰や環境意識の高まりを背景に「エコ」が製品やサービスのうりの一つとみなされるようになってきていました。特に日本では戦後最長と言われていた好景気(バブル期と違いあまり実感はありませんでしたが…)もそれを後押ししていたでしょう。

 ところが,2007年末あたりから景気は後退局面に入り,先ごろの金融危機をきっかけに景況感は一気に悪化しました。この秋の企業の決算発表も軒並み減益です。こうなると,財政悪化で企業における「エコ」の優先度が低くなるのではないか---取材しながらそんな懸念を感じたわけです。しかも,原油価格は一時期より下がったため,盛り上がりつつある再生可能エネルギーの利用や省エネといった機運が弱まる可能性もあります。もちろん,世界の潮流として"環境負荷を低減するべし"というベクトルは変わらないでしょうし,企業も環境というキーワードは無視できないはずです。しかし,ベクトルの方向は変わらなくても,小さくなってしまうかもしれません。

 太陽光発電などは欧州に負けじと再び政府が補助金を出そうとしているなど,環境負荷低減という点では明るい材料もあります。逆にこうした時勢だからこそ,企業の環境への取り組みの本気度が試されるときなのかもしれません。生き残りに必死で環境は後回し---なんてことにならないことを願っています。


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