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2008/04/04

送電網の9割を代替可能? 太陽熱発電への期待と現状


オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ州にある米Ausra社の発電所。2004年に起工。Photo credit:Ausra
http://wiredvision.jp/news/200804/2008040423.html
2008年4月4日Alexis Madrigal
太陽熱発電会社の米Ausra社が、太陽熱発電技術には、米国の電力網が必要とする電力の90%を供給し、さらには多くのプラグイン式電気自動車の電力をまかなえるだけの能力があると主張する研究報告を発表した。同社の推計では、バーモント州の面積とほぼ同じ約2万5000平方キロメートル弱の面積に太陽熱発電施設を設置することで、米国の温室効果ガスの排出量を40%削減できるという。ただしこの推計では、16時間にわたってエネルギーを貯蔵できる技術を開発し、曇りの日が多い時期や夜間でもずっと安定した電力源を確保することが大きな前提条件になっている。これは今のところ、いかなる技術者も達成できないでいる難問だ。「太陽エネルギーを貯蔵できれば、石炭に対抗できる」とAusra社の最高経営責任者(CEO)であるBob Fishman氏は語る。この研究報告によれば、Ausra社は、2年以内にエネルギー貯蔵技術を商業化する予定だという。カリフォルニア州ベーカーズフィールドに2008年夏に竣工予定のモデル工場で、システムの試作品が作られる予定だと、同社の創設者であるDavid Mills氏はワイアード・ニュースに語った。今回の新しい研究報告(PDFファイル)は、国際エネルギー機関(IEA)傘下の国際協力機関『SolarPACES』がラスベガスで開催した会議に提出されたもので、現在ピアレビュー(同じ分野の専門家による評価)中とされている。太陽熱発電は、コスト面で競争力を持ち、都市レベルの消費量にも対応できる電力を、環境的に望ましい方法で発電する手法として、支持者を増やしている。たとえば、米Google社の『Google.org』は、Ausra社とは別の太陽熱発電会社、米eSolar社と契約を結んでいる。ソーラーパネルによって太陽光を電力に変える従来の太陽光発電と違って、太陽熱発電は、太陽光線を液体に集光し、液体を蒸発させてタービンを回す。太陽光発電のエネルギー効率は実測値で約15〜22%だが、太陽熱発電は、これに比べてはるかにエネルギー効率が高い(20〜40%)。また、太陽熱発電は、産業モデル的な電力生産に対応可能だ。つまり、多くの住宅やビルに分散するのではなく、大型の発電所を作ることもできる。[アリゾナ州に建設されている、世界最大規模の太陽熱発電施設についての過去記事(日本語版記事)はこちら]。
Mills氏の研究報告には、太陽熱発電所の建設費用に関する興味深いデータが掲載されている。その建設費用は、現時点では1キロワットあたり3000ドルだが、「数年」以内に1キロワットあたり1500ドルにまで減少すると推定しているのだ。『New York Times』紙は、2007年7月の記事で、石炭を燃料とする発電所の建設費用は1キロワットあたり2000〜3000ドルという米General Electric(GE)社エネルギー部門幹部の発言を引用している。Ausra社はまた、同社の太陽熱技術なら、1キロワット時あたり10セントで発電できると主張している。これは天然ガスの発電コストに匹敵するが、今後さらにコストが低下するというのが同社の見通しだ。同社は、小型線状フレネル反射器(Compact Linear Fresnel Reflector: CLFR)技術で脚光を浴びた。また、著名ベンチャーキャピタリストのVinod Khosla氏が率いる米Khosla Ventures、および元米国副大統領のAl Gore氏が代替エネルギー投資担当のパートナーを務める米Kleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)社という二大ベンチャーキャピタルから初期に資金提供を受けたことでも注目された。同社はベンチャー資本の形でこれまでに4300万ドルを確保しているほか、ベンチャー融資が少なくとも3000万ドルある。また、2008年内に、1億から1億5000万ドルの資金調達ラウンドの実施を計画している。Ausra社は現在、複数の電力会社に電力を販売している。たとえばカリフォルニア州の米Pacific Gas & Electric(PG&E)社と、177メガワットの太陽熱発電による電力を供給するという契約が発表されているが、Fishman氏によると、これに加えて数千メガワット規模の契約交渉も現在進行中だという。スペインの太陽熱エネルギー企業、Abengoa社も、米Arizona Public Services社と、280メガワットの発電装置に関する40億ドルの30年契約(日本語版記事)を結んでいる。だが、こうした太陽熱利用計画には、疑問の余地がいくつかある。まず、太陽エネルギー分野には数多くの企業が進出している。米Stirling Energy Systems社米SkyFuel社、イスラエルのSolel社米BrightSource Energy社米Rocketdyne社、さらには前述のAbengoa社やeSolar社で、これらはいずれも、何らかの形で鏡を用いて太陽光を集める方式をとっている。つまり、まだ規模が小さいエネルギー市場で、すでに激しい競争が繰り広げられているのだ。そして、さらに根本的な疑問は、「こうした計画中の発電所は実際に建設されるのか?」というものだろう。理論的には、太陽熱発電は、おしなべて見通しが暗い再生可能エネルギー分野では希望の星だが、何十もの発電所が安定稼働するまで、どういったエンジニアリング費用がかかるのか、把握は難しい。それも、前述のエネルギー貯蔵技術が実際に使用可能になることが前提だ。ベーカーズフィールドに建設されるモデル工場から、全米の電力需要の90%を満たすまでには、まだ長い道のりがある。米国の送電インフラも大幅に変更する必要が生じるが、これについては別の記事で触れよう。スタンフォード大学の『エネルギーと持続可能な発展に関するプログラム』の研究員で、「より環境に良い石炭」の利用を真剣に検討しているJeremy Carl氏(日本語版記事)は、大きな問題は、太陽熱発電所の規模拡大にあると考えている。Carl氏はワイアード・ニュース宛ての電子メールの中で、「こうした新しい技術の規模を、世界のエネルギーシステムにとって重要な位置を占めるスケールにまで拡大するのは、現在設定されている期限内では非常に難しい。新技術を理解するエンジニアやシステム・インテグレーター、部品の組立要員などが常に不足している」と書いている。ただし、他の環境保護団体は、Carl氏の支持する二酸化炭素の捕捉・隔離技術(石炭の燃焼によって排出される二酸化炭素を捕捉して地中に注入するというもの)についても同様に非難している。さらに、電力網を利用する消費者たちは現在、100%の信頼性を当然のこととして受け止めているが、太陽熱発電所の信頼性がこの水準に達することができるかという点についても、Carl氏は疑問視している。「[電気駆動のスポーツカーを作っている]米Tesla Motors社は今、自動車のような大量生産される消費者向け製品では、信頼性が99%でも受け入れられないことを思い知らされている。電力供給ならば、なおさらそうだ」とCarl氏。いずれにしろ、近い将来、太陽熱発電企業は、米国南西部の州に電力を供給することになるだろう。これらの州では、再生可能エネルギーに関する公式声明の中で、太陽エネルギーの使用割合を定めている。たとえば、ネバダ州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、コロラド州はいずれも、電力の15〜20%を太陽エネルギーで供給することを義務付けている。太陽熱発電は、こうした電力を現実に供給できる唯一の技術だ。炭素税であれ、キャップ・アンド・トレード方式であれ、二酸化炭素排出に価格を付ける何らかのシステムがあれば、石炭はコスト的に不利になり、太陽熱発電企業への後押しになるだろう。太陽熱発電企業は、究極的には、送電網の独占を目指している。Mills氏が研究報告の中に書いているように、太陽熱発電は「現在利用可能な中で、今後40年間にわたって電力部門で世界的に支配的な役割を担うと考えられる唯一の技術のはず」なのだ。中国やインドを含め、世界で支配的な役割を担うには、再生可能エネルギーのコストを石炭よりも安くする「RE < C」というGoogle社の夢を実現する必要があるだろう。[Google社による、リニューアブル発電研究開発部門についての過去記事(日本語版記事)はこちら。太陽発電企業への投資が投資家にとって都合の良いものであることについての過去記事(日本語版記事)はこちら]
[日本語版:ガリレオ-矢倉美登里/長谷 睦]


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