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2008/04/07

イノベーションで地球温暖化は防げるか?

150億トンは大変
 今の先進諸国のコンセンサスは,2050年までにCO2の排出量を約半分に減らして,それ以降の大気中のCO2濃度の上昇を抑えようというものです。人間が毎年排出しているCO2は約260~270億トンだそうで,森林や海洋の持つCO2吸収能力を約150億トンも超えているとのことです。この結果,毎年,大気中のCO2濃度は増加し,産業革命前の280ppmが現在は380ppmまで上昇し,最近は毎年2ppmほど増加が続いています。この大気中のCO2濃度が地球の平均気温と連動している,というのが現在の地球温暖化説の根拠です。また,一度,大気中に放出されたCO2はほとんど減少せず,500年後でも22%程度は残留しているという説もあります。ですから,早め早めに削減していかないと元に戻れなくなるという不安があるのです。
 2050年までに排出量を現在の半分に減らすには,途上国の発展が阻害されないように先進国は70~80%削減を目標にすべきという意見もあります。また,2050年には世界の人口は現在の1.5倍,約90億人に達しているという予測もありますので,一人当たりの排出量は相当に低い目標設定となるでしょう。
 もっとも,このCO2半減シナリオは,技術的な面だけで見ると不可能ではないかもしれません。風力発電所や太陽電池発電所をたくさん建設し,火力発電所を原子力発電所に置き換え,電気自動車や燃料電池車を普及させ,テレビやエアコンの消費電力を減らしたり,白熱電球をLED照明に替えたりしていけば,つまり今我々が持っている技術のポートフォリオ,今Tech-On!で盛んに紹介されている新しい技術を組み合わせるだけで,何とかなるかもしれません。
 でも実際には膨大なコストがかかるので,よほど社会の仕組みが変わらない限り容易には実現しないでしょう。日本では太陽光発電によるコストは,まだ火力発電や原子力発電の8~10倍もしています。では,コストの問題が解決したらそれですべてOKでしょうか。安価な代替エネルギーが見つかり,化石燃料の消費を減らすことができるようになれば,確かにCO2の排出量は減ります。しかし,それだけでは人類のエネルギーの使用量はあまり変わらないか,もしかしたら人口増加の分だけ増えることになるでしょう。
 私たちの生活習慣は相変わらずエネルギーに依存し,工業生産は増え続け,鉄やプラスチックやシリコンの使用量は増え,いつか資源は枯渇し廃棄物の山に埋もれてしまうでしょう。それだけでなく,人口の増加と生活水準の向上で,水や食料も不足していきます。CO2濃度の上昇はなんとか防げたとしても,私たちが本質的に抱えている環境問題の解決にはなりません。そうではなくて,私たちにはもっと根本的な発想の転換が求められているのです。LCA(ライフサイクルアセスメント)をベースにユニークな環境論を展開する東京大学名誉教授の安井至氏は次のように言っています。
 「昨年の6月にドイツで行われたサミットあたりで,世界はこれまでの『経済と環境の両立』という考え方から『環境と経済の両立』という考え方に変わった。すなわち,これまでの『経済を発展させることが人類の目的である。その発展によって環境被害が余りひどくならないように対策を打つ』という考え方から『環境制約を最重要課題と考え,その中でいかに経済発展を実現するか』という考え方に変わった。マラソンの折り返し点のようなものである。最初に折り返したのは,北欧とドイツ,それに加えてイギリスぐらいか。そして,他のEU諸国もほぼ折り返し点に到着した。先進国で最後尾にいるのは,アメリカ,その前を走るのが日本・カナダである。」(「日本のガソリン税は高いのか?長期的ビジョン無き暫定税率論議」,日経エコロミー,08/01/30,原文は同氏ホームページ

ここにはトップやアーカイブページで省略される(記事単独ページでだけ表示される)文章を書きます。

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