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2010/12/03

【応物学会】早稲田大学ら,CNTトランジスタを電気2重層キャパシタに?

2010/09/16 04:36野澤 哲生=日経エレクトロニクス  早稲田大学は,インクジェット技術を全工程に用いて単層カーボン・ナノチューブ(SWCNT)をアクティブ層に用いたTFTを作製した。2010年9月14日に長崎大学で開催した第71回応用物理学会学術講演会で発表した(講演番号14a-B-4)。学術雑誌に論文も発表済みである。

 このSWCNT-TFTを開発したのは, 早稲田大学 理工学術院 先進理工学部/研究科 准教授の竹延大志氏,および山形大学 助教の沖本治哉氏ら。具体的には,SWCNTを,溶媒のN,N-ジメチルホルムアミド(DMT)などに溶き,インクジェット技術を用いて滴下して基板上に作製した。基板には,Si基板のほか,透明なフレキシブル基板も用いたという。Si基板を用いた試作では,キャリア移動度2cm2/Vs,オン電流とオフ電流の比が105が得られた(関連記事)。

 ただし,これらの値自体は,NECなどによるインクジェット技術でのCNTトランジスタの作製例と大差ない(関連記事1,関連記事2)。

 今回の特徴は,(1)TFTの半導体層だけでなく,電極の作製にも同じSWCNTのインクを用いた点,(2)イオン液体をゲート絶縁膜に用いて,従来課題だった特性のヒステリシス性を大きく低減し,同時にソース電圧とドレイン電圧間の電圧(VSD)も-1Vと従来の1/50~1/100に低減した点,の二つである。

 TFTの電極材料には一般には金属が使われる。一方,SWCNTには,特殊な作り分けをしない限り,半導体の特性を示すものと金属の特性を示すものが混合している。今回,竹延氏らはインクジェットによる滴下の回数によって,二つの特性を作り分けた。滴下回数が増えてSWCNTの濃度が高くなると,材料中の金属の特性を持つSWCNTが互いにつながって全体として金属となり,薄いとすべてはつながらないので半導体になる。半導体であることがほぼ確実なのは,滴下回数が2回までの場合だったという。

 イオン液体をゲート絶縁膜に用いたことでヒステリシス性やVSDが低減したのは,TFTが電極と「溶媒」から成る微小な電気2重層キャパシタのように機能して,キャリアの動く自由度が増えたり,VSDと補完的に働く「静電容量」が大幅に増加したりしたためだという。

 ただし,イオン液体は一般には揮発しにくく,素子から流れ出す課題があった。竹延氏は,最近は乾燥するとゲルになる材料を利用し,良好な結果を得ているという。

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