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2011/08/08

IMS、スーパーキャパシタの電気容量を従来比6倍に向上できる電極材料を開発

2011/07/19
アザ縮環構造を導入した新規な共役多孔性高分子のユニット構造。図中、青は炭素原子、白は水素原子、紫は窒素原子を示す。同分子は平面シート状構造をとり、電気を通すことができる

自然科学研究機構 分子科学研究所(IMS)の江東林准教授らの研究グループは、高電気容量を実現できる新たな蓄電用材料の開拓に成功したことを明らかにした。同成果は、独化学会誌の英語版「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版にて公開された。
スーパーキャパシタは、電気二重層と呼ばれる固体と液体との界面に、正負の電荷が蓄えられることを利用したエネルギー蓄積・供給装置。次世代のエネルギー貯蔵装置の1つとしてさまざまな分野で利用することができることから、各所で研究開発が進められている。これまで、スーパーキャパシタの電極材料としては高い電気伝導性と大きな表面積を有する多孔性炭素材料が広く使われてきたが、いずれも電気容量、エネルギー密度および出力密度が低く、新たな電極材料の開発による蓄電性能の向上が求められていた。研究グループではこれまで、電子が分子全体に広く広がった共役構造と巨大な表面積を可能にする多孔性を共に持ち合わせたさまざまな機能性を持つ平面状の共役多孔性高分子の合成と機能開拓を行ってきており、今回の研究では、共役多孔性高分子に窒素原子を含むヘキサアザトリフェニレンを用いて新規なアザ縮環構造を導入し、熔融の金属塩化物を反応媒体として用い、300~500℃下での縮合反応により合成。アザ縮環構造による電解質イオンとの相互作用を強め、また、多孔性材料のポア構造を制御して作ることで、電気容量、エネルギー密度および出力密度が向上できることを解明し、新たな電極材料の開拓に成功した。アザ縮環構造を有する共役多孔性高分子は多くの窒素原子を内包しており、合成条件により、細孔サイズを約1nmにコントロールして作ることに成功。この縮環共役多孔性高分子は電気伝導性を示し、電極材料として適している。実際にスーパーキャパシタの蓄電特性を検討した結果、電気容量は1g当たり946Fを示した。これは、従来の炭素材料である活性炭やカーボンナノチューブ、グラフェンなどに比べて、電気容量を6倍に向上することにつながるという。また、アザ縮環共役多孔性高分子は極めて速い充放電特性を持ち、短時間で充放電できる特徴を持ち合わせているほか、化学的に安定な縮環構造のため、何度も充放電することが可能なため、1万回充放電を繰り返しても、電気容量の減衰はまったく観察されず、安定して使うことができることも判明した。蓄電技術における電極材料は、その性能向上の中心的な役割を担っており、材料の開拓による蓄電性能の向上および応用への展開が求められている。今回の研究成果は、共役多孔性高分子が縮環構造を持つことで、優れた特性を持つようになることを示した結果であり、高性能な蓄電システムの構築に必須の電極材料を実現することにつながることが期待される。

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