英大学と英ベンチャー、電気2重層キャパシターの容量密度を100倍に
野澤 哲生
2016/12/08 18:34
英University of Surreyと英Augmented Optics社、およびAugmented Optics社の100%子会社である英SuperCapacitor Materials社、英University of Bristolは2016年12月5日、従来の100倍の容量密度を備えた電気2重層キャパシターを実現可能な電解質材料を開発したと発表した(発表資料)。電気自動車(EV)の航続距離を600km以上にできたり、スマートフォンを数秒で充電できたりする見通しという。
電気2重層キャパシターは、正負の電極と電解液の界面に正負の電荷が集まることであたかも2重のコンデンサーが形成されたかのように電力が蓄えられるキャパシター。典型的な特性は出力密度が数kW/kg前後、エネルギー密度が数Wh/kgで、ちょうど一般的なコンデンサーとLiイオン2次電池(LIB)の中間的な特性といえる。ただ、こうした特性は中途半端ともいえ、用途は限られていた。
今回開発した材料は、ソフトコンタクトレンズに用いる高分子材料から成るゲル。電気2重層キャパシターの電解質として用いることで、エネルギー密度を従来の約100倍の数百Wh/kgにできる見通しという。既存のLIBのエネルギー密度と比べても数倍と高い。出力密度の高さや充放電サイクルでの劣化がほとんどないという特性は従来の電気2重層キャパシターを引き継ぐ。
この電気2重層キャパシターをEVに用いれば、ガソリン車の匹敵する航続距離を実現できるとする。「既存のEVはロンドンから(約90km離れた)ブライトンまでしか行けないが、この電気2重層キャパシターを使えば、ロンドンから(約600km離れた)エディンバラまで再充電なしで行ける」(University of Surrey)。しかも、1回の満充電に必要な時間は2~3分と、ガソリンの給油並みに短いという。
Augmented Optics社とSuperCapacitor Materials社は自社では電気2重層キャパシターは製造せず、ゲルの材料を電気2重層キャパシターのメーカーに提供して共同開発する方針だとする。
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