図1:太陽光発電システムの累積導入量 (出所)IEA-PVPS資料より
ソース:日経エコノミーhttp://eco.nikkei.co.jp/column/article.aspx?id=20080118ch002ch
国際エネルギー機関(IEA)の太陽光発電システム研究プログラム(IEA-PVPS)によれば、太陽光発電システムの累積導入量は現在世界全体で3696メガワット(MW)である(2005年のIEA-PVPS加盟国ベース)。97年の累積導入量がその10分の1にも満たなかったことを考えると、太陽光発電が僅かな期間に急成長を遂げてきたことが分かる(参照:図1)。
期間による幅は大きいが、今後も2020年まで市場は年平均20%成長すると予想されている。 この累積設置台数の構成から分かるように、太陽光発電システムの担い手は日本、ドイツ、アメリカの3カ国である。特に日本は2000年代の初期まで世界のほぼ半数を1国で占める太陽光発電大国であった。
■ドイツ、日本を抜き太陽光発電の世界一に
これに対して近時伸張著しいのがドイツだ。2004年に年間設置量(MW)で初めて日本を抜いて世界一となった後、2005年末には累積導入量でも僅かながら日本を上回り、フロー、ストックの両面で文字通り太陽光発電のトップに躍り出ている(参照:図2)。ちなみに人口1人当たりでみても、ドイツ17.3W/人、日本の11.1W/人の2カ国だけが突出している。 この日独逆転は、日本でもドイツでもマスコミの注目材料となり大きく報道されたのでご覧になった方も多いだろう。日本での報道はやや危機感を伴ったトーンで、かたやドイツでは「あの日本を抜いた」とかなり強気なトーンで、それぞれ対照的に報じられていたのが印象的であった。 実際、ドイツ国内を移動していると、南部のバーデン・ヴュルテンベルク州やバイエルン州を中心に、太陽光発電システムが目につくようになった。また、太陽光発電事業に相次いで参入した新興企業群が市場拡大の波にのって業容を拡大し、このところ株式公開、新工場建設などが相次いでおり、まさに太陽光ブームとでもいえる活況を呈しているのが足元の状況である。
図2:日米独における太陽光発電システムの年間導入量推移 (出所)図1に同じ
こうしたブームを支えているのが、これまでみてきたEEGによる固定買取制度だ。特に2004年の法改正により太陽光に有利な買取価格が付与されたことが今日の拡大の大きな契機である。2006年現在の買取価格51.8セント/kWhは、通常電力の10倍、風力の買取価格の5倍の水準。これに、後ほど紹介する省エネを進めるための住宅の近代化支援の低利融資制度など様々な政策的な手当てが一体となって、足元の急拡大を支えているとみてよい。 累積設置能力ではまだ目立たないが、現在ドイツに次いで急進しているスペインも同様だ。スペインは2005年~2010年の再生可能エネルギー整備計画(the Renewable Energy Plan: PER)で400MWを新たに整備するという目標を掲げているが、足元で太陽光が急進し、2007年にはこの目標をクリアしそうな勢いだ。スペイン産業省は、これを受けて、国家エネルギー委員会に対してこの目標値を1200MWに改定するよう働きかけている。この急進の背景にあるのもフィードインタリフ制度であり、2008年9月末まで適用される現会計年度の買取価格は割高批判のあるドイツ並に高水準である。
図3:スペインにおける太陽光発電システムの新規設置量 (出所)SolarPlaza.com
こうした太陽光発電の拡大の象徴ともいえるのが、広大な敷地に太陽光パネルを大量に設置して大規模な売電事業を行うソーラーパーク事業である。現在、大型施設の建設が続き、「世界最大規模のソーラーパーク」が日替わりで入れ替わる活況を呈している。
■活況、ソーラーパーク事業
現在その中心地になっているのがスペインだ(参照:図3)。ドイツを上回る固定買取価格を背景に100MWクラスの大規模施設が続々と整備されつつあり、足元のシリコン不足の最大の要因はスペインだとすらいわれている。写真は筆者が訪問したドイツ国内の10MWクラスのソーラーパークである。今となってはむしろ小規模に分類されてしまうが、完成直後は世界最大規模の一角を占めていた。 固定買取制度のもとでの大規模太陽光施設は、(1)風況に比べて日照量の変動リスクは小さい、(2)ボイラーなどの機械部分が少なくメンテ費用もあまりかからない、(3)(若干笑い話のようになるが)架台に使用する大量のアルミニウムが、昨今の資源価格高騰を受けてプロジェクトの終価を引き上げるなど、投資適格なプロジェクトに仕立てたてやすいといわれている。リスクが小さい分、プロジェクトの期待リターンは他の再生可能エネルギーに比べて相対的に低くなるが、反面銀行からの融資なども利用しやすいため、負債を活用してそれなりの投資利回りを実現している。欧州の太陽光発電事業は、金融機関も含めて、現在この事業モデルの海外への拡販に熱心に取り組んでいる。主戦場は、マーケットが大きいアメリカ西部だが、それ以外にも欧州と同様の固定買取制度を導入している国を中心に激しい案件獲得競争が繰り広げられている。身近なところではお隣の韓国がそうだ。太陽光はエネルギー密度が低いため、大容量の発電を行うためには広い面積にシステムを設置する必要がある。ソーラーパークは、まさにこの特徴に則した事業形態といえるが、用地制約を抱えるヨーロッパでの拡大に限界があるのは明らかだろう。関連業界の目は、中東やアフリカに広がる広大な砂漠にも向けられている。将来、太陽光発電のコストが狙い通りに低下していけば、その膨大なポテンシャルを活用することも可能になるだろう。ドイツやイベリア半島の進むソーラーパークは、将来に向けた先行投資としての性格も併せ持っているようだ。[2月20日/Ecolomy]
0 件のコメント:
コメントを投稿