amazon

twitter

※twitterでUCニュース配信はじめました。ユーザー名 a77a フォロー自由です

2009/01/27

中国初のプラグインハイブリッド車、発進-バフェット氏が後押しする好調BYDから商品化


http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20081222/181028/
Frederik Balfour (BusinessWeek誌アジア特派員、香港)
米国時間2008年12月1日更新 「China's First Plug-In Hybrid Car Rolls Out」

 米ビッグスリー(自動車大手3社)が必死で生き残る道を模索する中、中国の自動車メーカーが自動車業界の進むべき道筋を示すことになるかもしれない。

 中国の比亜迪汽車(BYDオート)は12月15日、米ゼネラル・モーターズ(GM)、トヨタ自動車(TM)、日産自動車(NSANY)に先んじて、広東省深セン市の拠点で世界初の量産型プラグインハイブリッド車(HV)「F3DM(デュアルモード)」の販売開始を発表した。車体価格は2万2000ドル(約200万円)で、通常の家庭用電源から充電でき、1回の充電で最大60マイル(約96キロメートル)の走行が可能だ。

 今年初めの自動車業界では、BYDが実用に堪えうる自動車を本当に開発できるのかという懐疑的な見方が強かった。BYDは今年1月、米デトロイトで開催された北米国際自動車ショーでプラグインHVを発表したが(BusinessWeek.comの記事を参照:2008年1月10日「China's Plucky Plug-In Hybrid」)、2003年に自動車事業に参入したばかりの中国の新興メーカーに、商用化可能なプラグインHVの製造ノウハウがあるなどと考える人はほとんどいなかった。

 BYDのプラグインHVの成功を確信しているらしい数少ない1人が、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏だ。同氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイ(BRKA)傘下の米エネルギー会社ミッドアメリカン・エナジー・ホールディングス(本社:米アイオワ州デモイン)は今年9月、BYDオートの親会社BYDの株式9.9%を2億3100万ドル(約240億円:当時)で取得。2011年までに北米市場でプラグインHVの販売を目指すBYDの計画への支援を目的としたものだ(BusinessWeekチャンネルの記事を参照:2008年10月8日「バフェット氏、中国の電気自動車会社に投資」)。


米中が環境対応車技術で協力

 環境対応車開発における中国の可能性に対する期待はほかにも見られる。中国でF3DMの発売が発表されるわずか数日前、米中両国政府は環境対応車の技術面で協力していく計画を明らかにしている。中国科学技術省と米エネルギー省は12月11日、自動車用電池に関する技術協力について協定を締結した。

 F3DMにはトヨタの「カムリ」とよく似たBYDのガソリン車「F3」セダンと同じプラットフォームが使われており、外観にこれといった目新しさはないが、実際に運転してみると大違いだ。先頃BYD深セン工場の広大な敷地内で行った試乗では、停止状態から時速60マイルまでの加速時間がわずか10.5秒と、目を見張る加速性能を発揮した。


エンジン音がしない

 非常に新鮮だったのは、エンジン音がしないこと。そのため、走行時の風切り音や路面とタイヤの摩擦音がよく聞こえる。最高速度は時速約100マイル(約160キロメートル)で、1回の充電での最大航続距離は60マイル。電池が切れるとガソリンエンジンが作動し、自動充電が始まる。

 とはいえ、多数の自動車メーカーがしのぎを削る中国自動車市場で、消費者に受け入れられるまでの道のりは険しい。急速な成長が何年も続いていたが、ここへきて中国の自動車販売は低迷しており、11月は前年同月比で17%落ち込んだ。またトヨタのハイブリッド車「プリウス」も中国市場では苦戦を強いられており(BusinessWeekチャンネルの記事を参照:2008年2月22日「ハイブリッド車、中国市場で伸び悩む」)、今年1~10月の販売台数はわずか748台にとどまっている。

 BYDのプラグインHVが直面する課題はそれだけではない。従来型の電源装置から電池パックをフル充電するには約7時間かかるが、自動車所有者の大半が居住するマンションなど集合住宅の駐車場には充電設備がない。

 「問題はインフラだ。誰もが一戸建てに住み、自宅の車庫に電源コンセントがある北米とは違い、深センや上海、北京など中国の都市では大規模な集合住宅に住んでいる人が多く、充電する場所がない」と、米自動車調査会社CSMワールドワイド上海事務所のグレーターチャイナ地区自動車市場総括アナリスト、張豫(イエール・ジャン)氏は言う。 BYDオート統括マネジャーのヘンリー・リー氏もこの問題を認識しており、今後1年間の販売台数を数百台止まりと予想、「プラグインHVを実際に見てもらい、メリットを理解してもらうことが必要」と語る。


電池技術の豊富な経験

 BYDは自動車メーカーとしての経験不足を、電池の技術力で補っているとリー氏は言う。BYDは世界最大手の携帯電話用電池メーカーで、市場シェアは30%を誇る。また電動工具からノートPCまで様々な用途の電池を製造している。「製造と研究開発の豊富な経験を活かしてあらゆる技術上の障害を克服し、商用利用を実現した」と、リー氏は胸を張る。

 BYDオートでは、総勢3000人から成る研究開発チームが鉄系2次電池の開発に当たった。リー氏によれば、プリウスに使われているニッケル水素電池より性能は上だといい、「プリウスはガソリンエンジンによる走行が中心なのに対し、F3DMはエンジンが小さく、電池走行が主体」と言う。実際、F3DMには3.3ボルトの電池100個を集めた電池パックが後部座席の下に格納されている。電池パックは約2000回の充電が可能で、総走行可能距離は10万マイル(約16万キロメートル)。エンジン排気量はわずか1リットルで、ガソリンエンジンに切り替わるとそのエネルギーを利用して電池を充電できる。

 二酸化炭素(CO2)排出量の削減はもちろんのこと、燃料費の節約も大きなセールスポイントだとリー氏は見ている。100キロ走行する場合の電気代は約1.40ドルで済むが、従来のF3モデルは7ドルのガソリン代がかかるという。

 最初の納車先は、販売開始式典で購入契約を締結した深セン市政府及び中国建設銀行が予定されている。

 BYDの自動車輸出部門で販売責任者を務めるポール・リン氏は、ほかの銀行や国有企業も、環境対応車の導入を都市部の大気汚染が大きな問題となっている中国で企業が果たすべき社会的責任のカギと見なして、これに追随することを期待している。同氏によると、現行のプリウスはガソリン走行が中心であることから、買い手側の中国企業はとりたてて環境に優しい車とは見なしていないという。


躍進するBYD、「F3」は10月に中国で最もよく売れたセダン

 とはいえ、7500~9900ドル(約67万~88万円)で手に入るガソリン車F3の2倍以上もするF3DMの価格が妥当なものと認識されるまでには、まだ時間を要するだろう。さらに、国内各都市の急速充電設備の設置をいかに進めるかという問題もある。こうしたインフラ整備は、BYDが来年後半に発売を予定している完全な電気自動車「E6」の成功には不可欠だ。

 同社では、電池容量の50%を10分で充電できる急速充電設備の設置について、各地の公共施設との提携を模索している。ただしそのためには通常よりも大きな電流が必要となる。家庭用電源は約20アンペアだが、急速充電装置には約100アンペアが必要だ。

 今、BYDには勢いがある。F3は10月に中国で最もよく売れたセダンで、出荷台数は1万5000台を超えた。今年1~10月の総販売台数は、業界全体が10.25%増にとどまったのに対し、BYDは36%も増加した。今年の株価についても、香港証券取引所上場の中国本土企業株を対象とするハンセン中国企業株指数が50%近く下落する中、香港上場のBYD株は、バフェット効果と自動車販売の好調により12%の下落にとどまっている。

 香港の投資銀行CLSAによれば、BYDの今年の売上高は昨年の31億ドル(約2800億円)から39.3億ドル(約3540億円)に増加、利益は昨年の2億3500万ドル(約212億円)から1億9600万ドル(約176億円)になると予想される。

© 2008 by The McGraw-Hill Companies, Inc. All rights reserved.




0 件のコメント: