2010/06/22 21:56野澤 哲生=日経エレクトロニクス
共同研究のメンバー(の一部)。左から,学生のBetar Gallant氏,第一著者の一人のSeung Woo Lee氏,教授のYang Shao-Horn氏と同 Paula Hammond氏。(写真提供:MIT)
米Massachusetts Institute of Technology(MIT)は,カーボン・ナノチューブを含む混合材料を正極材料に用いたLiイオン2次電池を開発した。Liイオン2次電池とキャパシタの両方の性能を備えるという。具体的には,出力密度は一般的なLiイオン2次電池の10倍,エネルギー密度は一般的なキャパシタの5倍になった。論文が2010年6月20日付けの「Nature Nanotechnology」に掲載された。この電池を開発したのは,MITのDepartment of Chemical Engineering ProfessorのPaula T.Hammond氏と,同Department of Mechanical Engineering兼同Department of Materials Science and Engineering ProfessorのYang Shao-Horn氏の研究グループ。ちなみに,論文の第一著者は,同大学 学生のSeung Woo Lee氏と,ポスト博士課程の薮内直明氏の二人である。開発した電池では,正極に多層カーボン・ナノチューブ(MWNT)と有機材料の混合材料,負極にチタン酸リチウム(Li4Ti5O12:LTO)を用いた。「正極にMWNTを用いたのはこれが初めてのはず」(MIT)という。正極の構造を詳しく説明すると,MWNTとカルボキシル基を結合させたMWNT-COOHの層,およびMWNTとアミノ基を結合させたMWNT-NH2の層を,それぞれの溶液に電極を浸すことで交互に100層弱から最大400層(2種類の層を1組とすると最大200組)重ねて作製する。2種類の層の一方は正に,もう一方は負に帯電しているため,積層することで互いに強固に結合するという。論文によれば,この電池の特徴は非常に高い出力が可能で,しかもその際にエネルギー密度が高いこと。「低出力時のエネルギー密度は,一般のLiイオン2次電池とあまり違いがないが,高出力時には今回の電池がより大きな性能を示す」(論文)という。具体的には,今回の電池の単位質量当たりのエネルギー密度は,出力密度が100kW/kgの場合に200Wh/kg。低出力時の最大エネルギー密度は約500Wh/kgである。ただしこれらは,電極のみの質量に対する値である。電池全体の質量に対しては,「これらの値のおおよそ1/5になる」(論文)。つまり,出力密度が約20kW/kgの場合にエネルギー密度約40Wh/kg,低出力時の最大エネルギー密度は約100Wh/kgとなる。「一般的なLiイオン2次電池は,電池の質量に対して出力密度1kW/kgの場合にエネルギー密度が150Wh/kg。一般的なキャパシタなら,その質量に対して電力密度10kW/kgの場合に5Wh/kg」(論文)。これらの既存の電池やキャパシタと比較すると,今回の電池は,「出力密度でLiイオン2次電池の約5倍,エネルギー密度でキャパシタの約10倍の性能を備える」(論文)。電池の充放電サイクル特性は,1000回以上充放電を繰り返しても性能の劣化は見られなかったという。
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