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2008/07/17

サウジの原油増産に疑問符・日量1250万バレルまで増やすのは本当に可能?


http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080716/165496/
2008年7月17日 木曜日 Steve LeVine (BusinessWeek誌、ワシントン支局記者)
米国時間2008年7月10日更新 「Saudi Oil: A Crude Awakening on Supply?
 サウジアラビアが暴騰する原油市場を沈静化する力は、以前から低下していた。しかし6月22日、原油価格が昨年夏と比べて2倍の「1バレル=140ドル」を超えたのを受け、サウジのアブドラ国王はOPEC(石油輸出国機構)加盟国、国際的な石油メジャー各社のCEO(最高経営責任者)、主要消費国の首脳を集め、市場の沈静化に向けた緊急会合を開いた(BusinessWeekチャンネルの記事を参照:2008年7月8日「原油高騰の沈静化なるか」)。そこでサウジの出したメッセージは非常に分かりやすいものだった。確実な需要が見込めるのなら、すぐにでも増産が可能だというのだ。だが、BusinessWeekが7月9日に入手した同国の油田に関する最新データを見ると、少なくとも今後5年間、場合によってはそれ以降も、サウジが公約したほどの原油増産はできそうにないと思われる。サウジ政府の当局者は、原油生産能力を現在の日量1000万バレルから、来年は日量1250万バレルまで増やし、需要があれば、日量1500万バレルまで拡大することも可能だと述べている。懐疑的な見方を払拭するため、首都リヤドの東に新しく開発しているクライス油田を報道陣に紹介したり(BusinessWeek.comの記事を参照:2008年6月23日「Inside Saudi Arabia’s New Mega-Oil Field」)、油田に関するデータを一部公開したりするなど、いつもは秘密主義を貫くサウジ政府が、多少なりとも情報公開に努めている。
●サウジとの連携を目論む石油企業
 しかし、サウジ政府の石油担当の当局者に近い人物から入手した詳細な資料によると、国営石油会社サウジアラムコの生産量は、2010年に最大で日量1200万バレルを確保するにとどまる見通しだ。しかも、この最大生産量を維持できるのは緊急時などの短期間に限られ、その後は持続可能な水準である日量1040万バレルに戻すとされている。BusinessWeekは、各油田ごとの2009年から2013年までの生産量を推計した資料も入手した。情報提供者はある石油会社幹部で、油田のデータを入手できるサウジ政府のエネルギー担当の高官に内容を確認したと述べた。この石油会社幹部は長年にわたって情報交換に協力してくれている信頼できる人物で、サウジ政府や情報を確認してくれた政府高官との関係を守るため、匿名を条件に今回のデータ提供に応じた。7月9日の時点で、サウジアラムコの関係者からはコメントを得られなかった。今後数年間サウジが日量1200万バレル以上の生産を確保するのは不可能というのが資料に基づく結論だが、米国の3人の石油業界の専門家はこの分析に納得できると述べた。中東エネルギー問題の専門家である米コンサルティング会社PFCエナジー(ワシントンDC)のロジャー・ディワン氏は、「増産計画を達成したとしても、1200万(バレル/日)以上にするのは難しいと見ている」と話す。石油業界が設立した研究機関である米エネルギー政策研究財団のアナリスト、ローレンス・ゴールドスタイン氏は、サウジの生産能力が不明確なことが依然として市場の問題だと指摘する。「事実を知っているのはサウジ政府だけのはずだが、もう10年も産出能力試験を実施していないため、政府自体も現実を把握できていない可能性がある」。原油価格が高騰した主な理由は、国際的な需給が逼迫していて、いざというとき原油を増産できる供給余力がないためだ。それゆえ、従来さほど大きな問題とは考えられなかった出来事、例えば生産量の多いナイジェリアでの反政府ゲリラの攻撃や、戦略上重要なホルムズ海峡を封鎖するというイランの威嚇発言に対し、原油市場が以前よりはるかに敏感に反応するようになっている。サウジは、原油輸出量をすぐに拡大する余力のある唯一の産油国として、再びエネルギー問題で重要な存在として浮上してきた。サウジは欧米とも密接な関係を持っている。米エクソンモービル(XOM)や米シェブロン(CVX)の前身にあたる企業は1980年までサウジアラムコと提携していた。現在、石油メジャーの多くが再びサウジとの連携を深めたいと考えており、その足がかりとしてサウジの油田維持に協力することを提案したが、拒否された。
●サウジの公約は「空手形にすぎない」
 サウジ政府は石油に関して頑なに秘密を守ろうとする姿勢で、信用を損ねている。例えば、ロシア、ベネズエラ、ノルウェーと違い、サウジは石油埋蔵量の詳細な分析結果の公表を拒否しており、これが疑念を抱かせる要因になっている。米投資銀行シモンズ・アンド・カンパニー・インターナショナル(ヒューストン)のマシュー・シモンズ会長は、先日サウジ政府が日量1250万バレルの生産を公約したことについて、「単なる空手形にすぎない」と評した。シモンズ会長は、サウジの石油埋蔵量の推計についても疑問を抱いている。今回入手したデータで衝撃的なのは、ガワール油田に関するものだ。この油田は数十年間、サウジの原油生産の主力となっている。データによると、ガワール油田では来年は日量540万バレルを生産するものの、それ以後は急激に生産量が減り、2013年には日量447万5000バレルになる。情報提供者の石油会社幹部は、「この生産量減少分を埋め合わるため、クライス油田が非常に重要となる」と話す。クライス油田は今年後半から生産を開始する巨大な油田で、日量50万バレルの原油生産が見込まれている。先月開かれた会合の際、サウジ政府当局者は報道陣に対し、ガワール油田の生産量は、1993年から2007年まで日量500万バレル弱だと語った。こうしたデータは、今後の生産量が基本的には横ばいであることを示している。クライス油田とマニファ油田という重質油田が加わるほかは、今後5年間に増産する油田はない。データによれば、マニファ油田は2011年に日量12万5000バレルで生産を始めるが、2年後には日量90万バレルまで急増する。2014年の数字はデータに含まれていないが、情報提供者の石油会社幹部によると、資料で取り上げられている油田の1つ、シャイバ油田では、2009年から2013年までは日量75万バレルだが、2014年に日量100万バレルまで増産されるという。とはいえ、サウジアラビアがいかに莫大な原油埋蔵量を持ち、強気の発言をしていても、今後数年間に目標としている生産量は到底達成するのが難しそうだ。
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