http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/1033/1033-09.pdf?nem
2008.11.19
【ナノテクノロジー特集】 エネルギー貯蔵
将来のエネルギー貯蔵のためのナノテクノロジー利用動向
自動車メーカーが自動車用代替推進技術を求めるとともに、向上したエネルギー貯蔵の
必要性が特に強まっている。バッテリー、キャパシタおよび燃料電池の性能を向上させる
ために、研究は、フラーレン、カーボンナノチューブ(CNT)、金属酸化膜ナノ粒子および
様々なナノ触媒のようなナノ材料の使用に特に注目している。以下に2008 年3 月以降の
この領域の研究開発を紹介する。
・2008 年3 月に、デューク大学(ダーラム、ノースカロライナ州)工学部プラット校の研究
者は、鉄ナノ粒子を使用した燃料電池用の斬新な電解膜の開発を発表した。新しい電解膜
はより安価で、「ナフィオン(Nafion)」より高温度・低湿度で作動することができる。
(http://www.pratt.duke.edu/news/?id= 1288 参照)
・MIT の研究者も、「ナフィオン」電解膜の代替物質を作成するために、ナノテクノロジ
ーを使用した。彼等は、薄膜構造を一度に数ナノメートルで合せるために、層状集合技術
を使用した。研究者によれば、新しい薄膜で覆われた「ナフィオン」膜は、試作燃料電池
の出力を50%以上増加させた。
(http://web.mit.edu/newsoffice/2008/fuel-cell-0516.html 参照)
・東京工業大学との協力により、日清紡績社(東京、日本)の研究者は、高価な白金を使用
する代わりの燃料電池用電極触媒としての利用に、カーボンナノ球体からできているカー
ボン触媒を開発した。新しい触媒は、非常に安価な燃料電池の可能性を提示する。
(http://www.nni.nikkei.co.jp/FR/TNKS/Nni20080711D11JFA08.htm 参照)
・九州大学の研究者は、僅か半分の白金量の使用で、既存の触媒と同じ性能を提供する、
直接メタノール燃料電池用の新しい触媒材料の開発を発表した。新しい触媒は、白金含量
40%のカーボンナノファイバーから作られている。この高導電性ナノファイバーは直径
7nm~20nm であり、また燃料極の白金触媒反応に巨大な表面積を与える穴で覆われてい
る。
(http://pubs.acs.org/cgibin/abstract.cgi/jpccck/2008/112/i27/abs/jp801576n.html 参照)
・デルフト工科大学リアクター研究所(デルフト、オランダ)の研究者チームは、電極粒子
が縮小された時、材料構造の特性が著しく変化する場合があることを最近発見した。もし
電極部分が十分に小さくなった場合、一般に存在する相平衡は変化し、さらに完全に消え
ることがある。
これらの発見に基いて、研究者は、ナノ構造がリチウムイオンバッテリーの性能にどの
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ように影響するか予測することができる。これらの発見は、水素貯蔵用途や合金形成のよ
うな、小イオンがナノ結晶中に拡散するような応用において潜在的に重要である。
(http://www.azonano.com/News.asp?NewsID =3931 参照)
・2008 年の始めに、マックス・プランク研究所フリッツ・ハーバー研(ベルリン、ドイツ)
の研究者が、安価な商用カーボンナノチューブを電気化学エネルギー貯蔵応用のための高
性能カーボンに変換する簡単な方法を実証した。リチウム電池の電極材料として試験され
た時、この複合材料は長期間の試験サイクルにわたり高性能を示した。
(http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=5512.php 参照)
・2008 年4 月に、中国科学院化学研究所(CAS: 北京、中国)の研究者は、弾性ホローカー
ボン球体カプセルに入れられた錫ナノ粒子の調製により、指向性ナノ構造設計電極材料と
しての利益を実証した。この錫基盤ナノ複合材料は、非常に高い比エネルギー容量(優れた
繰り返し性能)を示し、したがって、リチウムイオン電池の陽極材料として大きな可能性を
示している。
(http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=5210.php 参照)
・リチウム燐酸鉄は、他のいくつかのリチウムイオン材料よりエネルギー貯蔵量は少ない
が、はるかに安全であり、より安価である。また、この材料が、ハイブリッド車で使用す
るバッテリーにとり、特に役立つ特性である、大きなピーク電力をもたらすことを可能と
する様に作ることができる。しかし、これまでのところ、リチウム燐酸鉄バッテリーは、
製造が難しく高価であることが分かっている。そのことが、従来のリチウムイオン電池以
上のコスト削減の可能性を減じている。
しかしながら、テキサス大学のマンシラム博士の率いる研究チームは、より時間がかか
らず、従来方式よりも、より低い温度を使用するリチウム燐酸鉄作成のマイクロ波基盤方
法を最近実証した。このことは低価格をもたらす。このプロセスは、長さ約100 ナノメー
トルで幅25 ナノメートルのロッド状の粒子を形成する。この小さな寸法が、リチウムイ
オンに充電と放電に対する高繰り返し能力を提供することを可能とする。
(http://www.technologyreview.com/computing/21141/ 参照)
・A123 システムズ社(ウォータータウン、マサチューセッツ州)は、リチウムイオン電池の
通常の酸化物化学に替えて、リチウム金属リン酸塩ナノ粒子で覆われたアルミニウム電極
を使用する自動車用バッテリーを商業化している。
2008 年4 月付の「自動車工学インターナショナル」誌の記事が、HEV で使用される向
上したリチウムイオン電池の開発で、ナノテクノロジーがどのようにして支援しているか
の興味ある概観を提供している。
(http://www.b2i.us/profiles/investor/fullpage.asp?f=1&BzID=546&to=cp&Nav=
0&LangID=1&s=236&ID=9370 のPDF ファイル「微小規模上の持続可能性」を参照)
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・カーボンフラーレン(すなわちバッキーボール)は、これまで信頼性ある合成が難しいこ
とが分かっていた。グラファイトを蒸発させて、析出させる、現在の生産技術は未熟であ
る。この方法ではごく僅かの割合のバッキーボールフラーレンだけしか産出されない。
しかし、2008 年6 月に、ある研究者グループが、前駆物質材料からほぼ100%の変換効
率でカーボンのバッキーボール配位を生産する方法を発見し発表した。
(http://arstechnica.com/journals/science.ars/2008/08/14/bucky-balls-not-quite- finished
and http://www.nature.com/nature/journal/v454/n7206/abs/nature07193.html#abs 参
照)
・超コンデンサーがエネルギーを貯蔵するのは、その電極が、スポンジのようにイオンを
吸収する多孔質材料(通常は活性炭)で覆われているからである。超コンデンサーの容量に
おける改善は、より多くの細孔を持ったカーボンスポンジを作ることで、これまでやって
来た。
しかし、化学防御研究所(北京、中国)の科学者は異なるアプローチをとった。彼等は、
イオンに対して活性炭よりはるかに大きな能力を持った材料の酸化マンガン(MnO)にイオ
ンを格納する。研究者は、タンタル金属フォイル上に成長させたカーボンナノチューブ「草
地」に、各々がおよそ100 ナノメートル直径のMnO 微小構造の「ナノ牧草地」を作るこ
とにより、MnO の高い電気抵抗に取り組んだ。「ナノ牧草地」構造は、既存の超コンデン
サーのカーボン基盤電極が貯蔵できる量の2 倍の電荷を貯蔵することができる。
(http://technology.newscientist.com/article/dn14753 参照)
( 出典: SRI Consulting Business Intelligence Explorer Program )
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