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2008/11/28

オムロン,安価にしやすい小型振動発電機を試作,将来はタイヤ空気圧監視装置へ


http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081114/161291/?ST=intelligent_car
自動車 センサ 環境 材料・加工 メカ設計 通信機器 電池 無線通信 実装
2008/11/14 22:16

図1 オムロンの開発した小型振動発電機

図2 高速道路の高架に取り付けた様子を見せた模型
 オムロンは,小型の振動発電機を試作した(図1)。構造や実装方法などを簡素化することで,安価にしやすいことが特徴。「将来は1000円以下を狙える仕組み」(オムロン)だと主張する。発電量は,周波数20Hzで加速度1Gの振動入力時に10μWとなる。キャパシタに数十秒~数分かけて蓄電し,間欠的に機器を動作させるといった使い方を想定する。10μWで無線通信機器などを常時動作させることは難しいためだ。まずは高速道路などの支柱に設置し,道路故障を検知するセンサ信号を無線通信する機器に搭載する計画である。ネクスコ東日本エンジニアリングなどと既に実証実験を進めている(図2)。試作品の外形寸法は20mm×20mm×8mmとなる。現在,高さを4mmまで半減した次世代品も開発中という。

 将来的には,自動車のタイヤ内部に設置するタイヤ空気圧の監視装置(TPMS)への搭載も狙っている。走行時のタイヤの振動は激しく,発電しやすい環境にある。空気圧センサの駆動に使う電池を今回の小型発電機に置き換えられれば,動作寿命を大幅に延ばせるかもしれない。TPMSの設置場所はタイヤ内部のため,交換などのメンテナンスが難しく,動作寿命の延長は重要な課題となっている。


エレクトレットを利用する

 発電方式には「エレクトレット発電方式」を使う。これは,対向させた二つの電極の位置関係に応じて静電容量が変化する現象を利用する。静電容量が変化すれば,電流が生じる。二つの電極の一方に,単極性の電荷を蓄積したものであるエレクトレットを使う。エレクトレットを使えば高密度に電荷を蓄えられ,二つの電極間の電位差を大きくできる。電位差が大きいと,大きな電流を得やすい。もう一方の電極には,AuやCuなどの導体を使うのが一般的である。試作機ではAuを使った。

 エレクトレットの材料としては,旭硝子のフッ素系高分子「CYTOP」を採用した。エレクトレットに使う材料の候補は数多くあるが,CYTOPを採用した理由として「高分子材料の液体のため,無機材料などに比べて加工しやすいことや,電荷密度を大きくしやすい」(オムロン)ことを挙げた。試作機の電荷密度は2C/m2という。「CYTOPを使ったことに加え,電極間ギャップを小さくするように工夫した結果,今回の試作機の電極間の電位差は約700V」(オムロン)と大きい。


製造は簡単

 構造としては,エレクトレット電極側を固定子,もう一方のAu電極を移動子とする。二つの電極をともに櫛形状として,ガラス板に配置する。櫛形状の電極間隔は「100~150μm」(オムロン)という。厚みはエレクトレットで約15μm,Auで0.数μmとなる。二つの電極とも,電極材料をガラス板に蒸着させ,エッチングするという簡単な手法で作れる。

 ちなみに,発電機の発生する電流は交流となる。このため,キャパシタなどに蓄電する際は,整流して直流にする必要がある。交流になるのは,対向する二つの櫛形状の電極間における静電容量変化が,電極の対向面積に応じて変化するからである。電極は櫛形状のため,移動子が動けば,静電容量は大小に変化する。


ギャップの大きさがカギ

 発電機の設計時のポイントは,ギャップの大きさにあるという。ギャップを小さくすると二つの電極は接触しやすくなる。接触すると,エレクトレットに蓄積した電荷が対向電極へと流れてしまい,発電機として機能しなくなる。とはいえ,ギャップを大きくすると,電極間の電位が小さくなり,発電量も小さくなる。試作機ではギャップを約70μmとした。ギャップを保つため,固定子側に,はんだボールのような形状のスペーサを設置する。このスペーサの材質や加工方法などは具体的に明かさなかったが,「スペーサは移動子と接触する個所となるため,摩擦の少ない材料を選定した」(オムロン)。加えて,加工しやすいことや安価なことも重視したという。また,固定子と移動子にガラス板を使ったのは,ガラスはSiなどと比べると安価な上に平面度が高く,ギャップを維持しやすいからである。こうした振動発電機では,MEMS技術を用いてSiウエハー上に電極を作る例も多い。

 移動子の保持には二つのコイルばねを使っている。ばね材料はステンレスである。移動子のガラス板中央付近を突起形状とし,この突起に二つのコイルばねの片端を取り付けた。もう一方の端はケースに装着される。コイルばねとしたのは,移動子の保持機能とばね定数を簡単に変化させる機能を得やすいからである。ばね定数を変化させれば,移動子側の共振周波数を変えられる。用途に応じて振動周期は異なるため,それに応じて共振周波数を変えなければ効率よく発電できない。例えば,歩行時の振動周期は数Hzで,高速道路などの高架では20~30Hzとなる。

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清水 直茂=日経エレクトロニクス

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