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2008/04/04

都会の新しい交通手段に熱い視線-英新興企業ウルトラ・モーターが軽量の電動バイクを米国で発売へ


Getting Around Town-Ultra Motor Light Electric Vehicle
The A2B is a new light electric vehicle from British startup Ultra Motor specifically geared for urban transport. It is set to go on sale in the U.S. this summer and in Europe later this year. Priced at $2,200 and available through specialty retailers, it runs at speeds up to 32 km per hour (20 mph) and goes up to 70 km (43.5 miles) on a single charge. It comes with a tissue-box-sized removable lithium ion battery that can be charged in a normal electric outlet, just like a mobile phone. Sturdier than a bicycle but lighter than a motorscooter, it weighs just 32 kg (70.5 lbs.). Options include a "dashboard" with a charge indicator and saddlebags to store laptops and other personal effects.
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080402/151973/
Jennifer L. Schenker (BusinessWeek誌、パリ支局記者)
米国時間2008年3月21日更新 「Revolutionizing Urban Transport」
1970年代の冷戦時代、旧東ドイツに駐在していたロシア人無線通信専門家ワシリー・シュコンディン氏が、同じ消費電力で35%高いトルクを得られる高効率の電気モーターを思いついた。“鉄のカーテン”の向こう側で埋もれる可能性もあったこのアイデアが今、都市交通のあり方を一変させる計画の要となっている。 数十年にわたる改良と野心的な構想、数百万ドル規模のベンチャー投資が実を結び、シュコンディン氏考案のモーターは世界中に普及しつつある。創立6年の英新興企業ウルトラ・モーターは、特許を取得したシュコンディン氏モデルのモーターを動力源とし、手頃な価格で環境に優しい電動スクーター、いわゆる“LEV(小型電気自動車や電動2輪車など)”を生産している。 ウルトラ・モーターはインドで既に2万5000台以上の電動スクーターを販売、設立後初の通年決算で2000万ドルの売り上げを計上した。この夏には米国で上位モデル、年内には欧州向けモデルの発売に向けて準備中だ。
■“個人用の乗り物”時代の幕開け■
ウルトラ・モーターは時代のニーズを的確にとらえたようだ。大気汚染や交通渋滞、エネルギー価格高騰に対する懸念から、世界の消費者や企業、政府の間では、環境に優しく燃料コストも安い電気自動車やハイブリッド車、電動バイクなど小型の乗り物への関心が高まっている。 「2007年は、気候変動の脅威が現実となっていることが正式に認められた年だ」と語るのは、モスクワを拠点として世界を股にかけて躍進するウルトラ・モーターのジョー・ボーマンCEOだ。そうした認識とガソリン価格の高騰とが相まって、「“個人用の乗り物”時代の幕開けが到来した。今こそが絶好の機会だ」と言う。 ウルトラ・モーターは既に、小規模企業にしては著しくグローバル展開を果たしている。英国セント・エドマンズを拠点として、世界8カ国に180人の従業員を抱え、シュコンディン氏が現在居住するロシアのプーシノで研究開発を行う。プーシノはモスクワの南方75マイル(120キロ)にある街で、旧ソ連が崩壊する1991年までは地図にすら載らない“秘密都市”だった。 工業デザインは著名なドイツのLEV設計者ノルベルト・ハラー氏が手がけ、製品開発は台湾、モーター製造は中国、製品組み立てはインドと台湾で行っている。これまでにロシアと欧州の投資家から2500万ドルを集め、現在はプライベートエクイティ(非公開株)投資会社から4000万ドルの調達を図っている。
■真のニーズを満たす■
ウルトラ・モーターはインドでは、世界大手の2輪車メーカーである現地企業、ヒーロー・グループと対等出資による合弁会社を設立。1年目にインド全域にフランチャイズの165店舗を開設、今後3年間で計700店舗に拡大していく計画だ。ウルトラ・モーター車はインド国内では「マキシ」及び「ベロシティ」の名で750~900ドルで販売されている。 米国市場への進出に当たって、ウルトラ・モーターは2007年9月、米AECF(本社:ロサンゼルス)を傘下に収めた(買収金額は非公開)。AECFの設立者はエド・ベンジャミン氏、マイク・フリッツ氏の2人である。ベンジャミン氏は“電気自動車の父”とも言うべき人物。フリッツ氏は1990年代中頃に米クライスラーを離れたリー・アイアコッカ氏が設立した米ベンチャー企業、EVグローバル・モーターズで主任技術者を務めていた。 「リー・アイアコッカ氏をはじめとする多くの人が、優れた技術と先見性とを持ちながら時機を見誤った」とボーマン氏は言う。EVグローバル設立当時の原油価格は1バレルわずか12ドルで、電気自動車は“必需品”ではなく、“贅沢品”の類にすぎなかった。「市場を動かす経済的要因が生まれたのはここ3年ほどに過ぎない。それ以前に参入した企業は、品質や知名度にかかわらず、いずれも失敗に終わった」。
■モーターのエネルギー効率が向上■
原油価格が1バレル100ドルを突破した今、米国の消費者はいよいよ環境に配慮した移動手段を利用し始めるとウルトラ・モーターは見ている。 例えばニューヨーク市運輸局では、デンマークの都市計画の専門家ヤン・ゲール氏の助言を得て、市内初の自転車専用レーンをマンハッタンに設置する計画だ。路上にペンキなどで指定された、よくある自転車用レーンとは異なり、完全に車道から分離された形の専用レーンとなる。このレーンを電動バイクも走るようになることを同社は期待している。 ウルトラ・モーターの電動バイクは、自転車とオートバイを合わせ環境に配慮して仕上げたものだ。従来の電気モーターと同程度の消費電力で約30%高いトルクが得られるため、重い荷物を積んでいても素早く加速でき、急な上り坂も登れる。もう1つの大きな利点は、電池パックの効率が最大10%向上し、充電頻度が少なくて済むことだ。またこのモーターは部品や可動部品の数が少なく、製造コストが抑えられ、点検・修理も容易になっている。 ウルトラ・モーターの製品はインドで人気が高い。通勤で使う人はガソリン価格の上昇による可処分所得の減少を埋め合わせようとしている。また、法律上オートバイやガソリンエンジン搭載のスクーターに乗れず、自転車かバスを利用するしかない18歳未満の若者にも好評だ。今後2~3年で、インド国内だけで約50万台の売り上げを見込んでいる。インド政府がガソリン車購入の抑制策を実施した場合、売上台数はその5倍以上になる可能性もある。
■米国向けモデルにはリチウムイオン電池を搭載■
ウルトラ・モーターの米国向けモデル「A2B」は、インド向けモデルとはかなり異なる。最大の違いは電池だ。インド向けモデルでは安価だが性能面で劣る鉛蓄電池が使われているのに対し、A2Bは小型軽量のリチウムイオン電池を搭載する。電池が車体に収まるため見た目はもっとすっきりしている。電池は取り外し可能で、大きさはティッシュペーパーの箱程度。携帯電話と同じように通常の家庭用電源から充電できる。 A2Bは軽量アルミニウム製で、米国内では専門小売店経由で販売される。1回の充電で最高速度は時速20マイル(32キロ)、1回の充電で走行できる距離は最長44マイル(70キロ)という設計だ。価格は2200ドルとスクーターの「ベスパ」の通常価格よりは安いものの、米ウォルマート・ストアーズ(WMT)で300ドル強で売られている米カリー・テクノロジーズの電動バイク「イージップ・コンフォート」と比べるとかなり高い。だが多少割高でも、顧客は軽量でスマートなデザイン、走行距離の長いウルトラ・モーターのA2Bの方を選ぶとボーマン氏は考えている。
■「米国市場の方が魅力的だ」■
では、どのような顧客像が描かれているのだろうか。ウルトラ・モーターは米国の特定の購買層に対象を絞っている。環境に負荷をかけない通学手段を求める大学生、家から半径20マイル(32キロ)以内の移動でほぼ事が足りる都市生活者、最寄り駅まで自転車か車で行かなければならない郊外通勤者などだ。 環境意識の高い欧州より先に、米国での発売に踏み切ったのはなぜなのか。「現時点では、競合企業が格段に少なく、顧客像が一様でつかみやすい米国市場の方が魅力的だ。成長の機会が大いにある」とボーマン氏は言う。 確かに、ウルトラ・モーターのLEVを買おうとする“ネブラスカ州の農民”はいないだろう。だが同社が行った市場調査では、都市部にも“LEVについて何も知らない人”が100万人単位で存在するとの結果が出ている。 © 2008 by The McGraw-Hill Companies, Inc. All rights reserved.
(都市交通の革命について詳しくは、BusinessWeek.comのスライドショーを参照)

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