amazon

twitter

※twitterでUCニュース配信はじめました。ユーザー名 a77a フォロー自由です

2008/09/01

産総研、鉄系リチウムイオン電池を安価、高性能にできるLiFePO4超微粒子を合成


図 電子とリチウムイオンの動きをイメージした図。(a)従来のLiFePO4表面の部分的なカーボンコーティング構造、(b)今回作製したLiFePO4/セミグラファイト構造

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080828/157049/
2008/08/28 10:51
産業技術総合研究所と、日本学術振興会(JSPS)は、リチウムイオン電池用の正極材料として有望なカーボン(炭素)膜を被覆したオリビン構造(結晶構造の一種)のLiFePO4(リン酸鉄リチウム)をナノメートルオーダーの超微粒子に合成することに成功した。LiFePO4は安価なため電気自動車用大型リチウムイオン電池の正極材料として注目されているが、高出力に必要なハイレート(短時間で大きな電流を流す)で充・放電させると容量が急激に下がるといった問題点が指摘されていた。

 本研究では直径を20~40nmに制御したオリビン構造LiFePO4の超微粒子を作製し、表面を厚さ1~2nmの黒鉛に類似したカーボン層(セミグラファイト膜)で覆うことで問題点を改善した。この微粒子は、30C、60Cというハイレートで充・放電した場合でも、それぞれ、112mAh/g、90mAh/gといった高い容量を維持していた。さらに、100%の充・放電深度で1100回の充放電サイクルを繰り返しても、容量は165mAh/gと初期の容量を維持した。

 現在広く使われているリチウムイオン電池用正極材料のLiCoO2は、原料価格や資源上の制約から電気自動車向けに使うことは難しいとされる。安価な鉄とリンからなるオリビン構造のLiFePO4をリチウムイオン電池の正極材料に利用できれば、低コスト、高出力、高い安定性が求められる電気自動車やハイブリッド自動車向け電池の実現に大きく近づく。

 リチウムイオン電池にナノ構造電極材料を使うと大出力化できることは報告されている。その理由としては、(1)活物質材料内でのリチウムイオンの拡散距離が減少する。(2)比表面積が大きくなり、単位面積当たりの電流密度が減少する。(3)ナノ細孔により、充放電過程における体積膨張が緩和され、サイクル特性が向上する、などがある。特に(1)と(2)は、大出力化を可能にする大きな要因になる。一方で、電解液と正極材料が接触する表面積が著しく大きくなり、放熱などに発火の危険性やサイクル特性の劣化などがあるといわれてきた。

 産総研エネルギー技術研究部門では、自動車用次世代リチウムイオン電池の大出力化を目指して、ナノ構造電極材料の研究開発を進めてきた。すでに負極材料として期待されている酸化チタン、正極材料として期待されているスピネル構造のマンガン酸リチウムなどについて、それぞれナノポーラス材料あるいはナノワイヤーの合成に成功し、これらの材料をナノ構造化することでリチウムイオン電池の大出力化が期待できることを示した。

 正極材料として有望なオリビン構造のLiFePO4についても、その容量の低下の原因が、活物質内部のリチウムイオンの拡散が遅いこと、電子伝導性が低いことであると推定し、それらを改善するため、粒子のナノメートルオーダーまでの微細化とカーボンでのコーティングに着目して、研究開発を進めてきた。なお、今回の研究の一部は、JSPSの科学研究費補助金により行われた。

 カーボンで粒子をコーティングするには有機物質を炭化するプロセスを経る必要があるが、その際に高温で熱処理すると不必要に粒子が成長し、せっかくナノメートルオーダーにした粒子が大きくなってしまう。また、ナノメートルオーダーの微粒子が凝集して、表面の一部にはカーボンがコーティングできないこともある〔図(a)〕。本研究では、ナノメートルオーダーまでの微細化と表面への完全なカーボンコーティングを同時に実現することに成功した〔図(b)〕。

この記事を英語で読む

0 件のコメント: