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2008/08/08

投資家から狙われるバッテリー技術を持つサプライヤー


http://www.nikkeibp.co.jp/style/eco/column/shimizu/080805_industry/index2.html
一方、欧州では何が起きているのか。年商4兆円という巨大なドイツの自動車部品メーカーであるコンチネンタル社が、年商1兆円にも満たないドイツの部品メーカーから敵対的買収を仕掛けられている。コンチネンタル社はもともとタイヤメーカーとして起業。最近はITTテーベスというブレーキメーカーを傘下に収め、さらにドイツ・シーメンスの自動車部門を買収し、自動車メーカー並みの売り上げを誇る総合的な自動車部品メーカーに成長している。ところが、クラッチやベアリングメーカーで知られるINAシャフラー・グループから買収を提案されたのだ。最近のコンチネンタル社はタイヤのみならず、エア・サスペンションからABS(アンチロックブレーキシステム)やESC(自動横滑り防止装置)などシャシー性能に関わる部品をモジュールでサプライするビジネスモデルを展開してきた。しかし、それだけで世界中の投資家を魅了することはないだろう。では、買収提案の背景にあるものは何なのだろうか。2009年度にメルセデスから市販予定の「450 BLUE HYBRID」に使われるリチウムイオンバッテリーは、コンチネンタル社から供給されるとダイムラー社は発表している(第39回参照)。それだけではなく、フォルクスワーゲン(VW)もポルシェもアウディも同社のハイブリッド技術を積極的に採用する計画だ。つまり、コンチネンタル社は電気駆動のコア技術となるバッテリーや電気モーターを専門とするベンチャー企業を傘下に持っているようだ。ハイブリッドや電気自動車は日本の技術が進んでいると油断していると、一気に逆転されるかもしれない。INAシャフラー・グループの資金を提供するのはスコットランドの投資銀行。その資金がどこからやってきたのかは想像に難くない。
●パリ・オートサロンがエコカーの祭典に
今年秋に開催されるパリ・オートサロン(モーターショー)はいつになく賑わいそうだ。VWは、開発を1年早めてフルモデルチェンジした「Golf(ゴルフ)」をワールドプレミアとして発表する予定。このゴルフは、1974年にデビューした初代「Golf Ⅰ」から数えて6代目となる。現在販売されている「Golf Ⅴ」は2代目プリウスと同じく2003年にフルモデルチェンジした。ゴルフとは思えないくらい大きく豪華になったことに戸惑いを感じたが、さすがVWと思える質実剛健なクルマ作りには同社の伝統を感じたものだ。しかし、欧州では苦戦を強いられていた。より大きく重くなったゴルフは、どんなにエンジンが頑張っても燃費を向上させることには限界があったのだ。2012年の130g規制(1km走行のCO2排出量)を達成するには、できるだけ早くコンパクトなモデルに切り替えるべきとう判断があったのだろう。噂では、次期ゴルフは徹底した軽量化と空力特性により、ボディだけで燃費を10%以上も低減できるという。試乗会は地熱など自然エネルギーの宝庫として知られるアイスランドで9月から行われる予定だ。VWのもう一つの悩みは高くなったユーロのおかげで輸出しにくい状況が続いていることだ。日本メーカーも昔は円高で苦しんだ経験があるが、ほとんどの日系メーカーは海外に生産をシフトすることで通貨の高騰に対処してきた。先般、VWは約1000億円を投じてアメリカに工場を建設すると発表している。場所はテネシー州で、2011年には生産を開始する計画だ。VWのヴィンターコーンCEOは2018年までには年間80万台を生産したい考えを明らかにしているが、そこで何を作るかについては慎重になっている。これにはトヨタがミシシッピー工場でSUVの生産を停止し、プリウスを生産すると発表したことが影響しているようだ。当初の計画では、VWは中型サルーンの「Passat(パサート)」を生産し、トヨタのカムリ、ホンダのアコードに対抗するのが狙いであった。しかし、大きなクルマの販売に陰りが見え始めたアメリカでは、むしろゴルフを生産するほうが得策かもしれない。もし、トヨタのプリウス(ハイブリッド)とVWのゴルフ(TDIとTSI)がアメリカでも生産されるならば、ビッグカーの時代は完全に終わりそうだ。パリ・オートサロンではこのほかにも、ホンダの新しいハイブリッド・コンセプトが登場するなど、エコカーの祭典となる気配。電気自動車にこだわるフランスの本音も見えるかもしれない。一昨年まで渋滞で移動が困難なことで知られていたイベントだが、今年は新しく設置されたトラム(路面電車)によって会場前の景観が変わるはずだ。市内からもアクセスしやすく、会場に訪れた人たちはそんなところからもエコへの意識の高まりを感じるだろう。環境意識が高まる一方の欧州では、もはや自動車は社会の敵といった声も出てきている。「厄介者にならないうちに、なんとかして自動車を環境に優しくしないと企業として生き残れない」という危機感は、むしろ日本よりも欧州のほうが強いかもしれない。「ガソリンハイブリッドはもう古い」と思わせる新しい技術の波が押し寄せてきている。

清水 和夫(しみず・かずお)
プロフェッショナルなレースドライバーとして国内外の耐久レースで活躍する一方、自動車ジャーナリストとして活動を行っている。ドライビングを科学的に分析する能力はクルマの正確な評価にも生かされ、シャープな論評は支持者が多い。ジャーナリストとしては国内だけでなく、海外にも活動を広げ、自動車の運動理論、安全、環境、ITSのみならず、自動車国際産業論にも精通し、多方面のメディアで執筆活動を行っている。本年10月には、日本放送出版協会より「ITS」を出版。ボランティア活動としては、CRS普及活動を行っている「子供の安全ネットワーク・ジャパン」、「妊婦のシートベルト着用を推進する会」などの会をサポートしている。近年は、救急法(ファーストエイド)・AED(除細動器)の普及活動も行っている。

主な連載誌
『NAVI』、『ENGINE』
主な著書
 「ITSの思想」(日本放送出版協会)、「ディーゼルこそが、地球を救う-なぜ、環境先進国はディーゼルを選択するのか?」(ダイヤモンド社)、「クルマ安全学のすすめ」(日本放送出版協会)、「燃料電池とは何か-水素エネルギーが拓く新世紀」(日本放送出版協会)などがある。


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