http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20080818/156460/
2008/08/18 09:24狩集 浩志=日経エレクトロニクス
2008年8月5~8日に日産自動車が開催した「先進技術説明会&試乗会」に参加し,ハイブリッド車と電気自動車の実験車両に試乗することができました。ハイブリッド車は「スカイライン」をベースとし,排気量3.5LのV型6気筒エンジンに10k~20kW程度とみられるモータと7速自動変速機,1kWh程度のLiイオン2次電池を組み合わせています。エンジンの出力が非常に大きく,モータの駆動力を生かすというよりは,モータで制動時などに生じる回生エネルギーを回収し,大きなエンジンを持ちながらも燃費を向上させることができるとの感想を持ちました。 一方,電気自動車は「キューブ」をベースにフロント・フード内に出力80kWのモータとインバータを,後席下にLiイオン2次電池を搭載しています。富士重工業の「R1e」や三菱自動車の「i MiEV」に比べて1.7倍~2倍近くあるモータの出力のせいか,非常に加速感のある電気自動車に仕上がっていました。さらに,これまでの軽自動車ベースの電気自動車に比べて,走行時に生じるタイヤの転がり音や風切り音が室内に聞こえにくく,非常に静かとの印象を受けました。日産自動車はハイブリッド車を今回の実験車両とは異なる車種で2010年度に,電気自動車も既存の車体ではなく,専用車体で同年度に発売する計画です。 現在,ガソリン価格の高騰やCO2排出の規制強化などから,自動車メーカーはハイブリッド車や電気自動車,プラグイン・ハイブリッド車などの電動車両の開発を積極的に進めています。これらの車両では,モータやインバータ,2次電池などの開発をこれまで以上に加速させていく必要があります。 例えば,モータではネオジム磁石が希少金属に依存しすぎていることに将来的な不安があります。特にネオジム磁石の保磁力を向上するのに欠かせないジスプロシウムは中国に偏在しており,中国に完全に依存しています。今後,電動車両の市場が拡大するのであれば,ネオジムやジスプロシウムを極力使用しないモータの開発が必須となりそうです。また,インバータであれば,従来のSiベースではなく,高温でも効率が高いSiCを用いたパワー半導体が,2次電池であればエネルギー密度をより高められる材料系が求められています。弊社では2008年7月にカー・エレクトロニクスに特化した展示会と専門フォーラムである「AT International 2008」を幕張メッセで初めて開催しました(詳細は日経エレクトロニクスの8月25日号の解説に掲載する予定です)。その専門フォーラムで永久磁石を用いないモータについて,東海大学 工学部電気電子工学科 教授の森本雅之氏や長崎大学 工学部 電気電子工学科 准教授の樋口剛氏に講演して頂きました。このほか,展示会で東芝やロームなどからSiCを用いた試作品を披露して頂いたほか,基調講演ではトヨタ自動車 第1電子開発部 部長の宮田博司氏からパワー半導体や電池の開発の重要性を語って頂きました。電動車両の開発には,自動車メーカーの力だけではもはや限界があると感じています。大学をはじめ,エレクトロニクス・メーカーや電子部品メーカー,材料メーカーが持つ研究開発力をより活用しなければならないでしょう。そのためには,自動車メーカーとエレクトロニクス・メーカー,電子部品メーカー,材料メーカー,大学や研究機関などの技術者が広く意見を交換できる場が必要です。AT Internationalはこうした場として役立てることを目指しています。次回の「AT International 2009」は,2009年7月15~17日にパシフィコ横浜で開催します。是非,電動車両の開発を加速させるような場が設けられればと思っています。
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